
以前にも1巻のレビューをした記憶があるが、
今回2巻、3巻をいっき読みして、
さらにこの本のファンになった。
『本なら売るほど』
児島 青 作
KADOKAWA

大人による大人のための、漫画本、である。
お子ちゃまは、まだ早い。読んではいけない?!
古本屋「十月堂」に訪れる、お客さんとの交流を描いた短編ストーリー。
店主の彼もまた、サラリーマンとして客だった経緯がある。
世代交代のタイミングで脱サラし店主になるものの、経営は順調とは言い難い。
一見カッコよくて飄々と生きているようにも見えるが、
心のうちは、売れない本を処分する痛みや、客への対応などに苦戦する。
大人なら誰しも経験したことがあるようなエピソードの数々が微笑ましい。
店主を軸に話は進んでいるが、
一話一話に登場する客(や、大家さん)の「人となり」を見て取れる。
皆、店主と同じ表面ではわからない不器用な人間臭さがあらわれる。
いいなあ、と思う。
ヒーロー登場で悪を退治するでもない、問題解決だけが目的ではない。
単純明快とはいかない、複雑な心の機微が見事に本書に落とし込められている。
それぞれの登場人物が絡み合っているのもまた一興。
とりわけ好きなエピソードがある。
1巻の最後に、前の店主の経営していた古本屋・岡書房に美大生の男子が訪れる。
その男子は、店主と仲良くなり、本を安く売ることになるが、
その本たちは実は「読むためのもの」ではなく「卒業制作材料」として、
見るも無惨な姿に形を変えていた。
それを見てショックを受ける前店主。

第三巻では
時が過ぎ、美大生だった南くんは美術学校の講師になる。
懐かしい街でもある古本屋、十月堂に辿りつく。
P145・・・・・・・
店主「毎晩本を捨てに行くんだ」
南「・・・・」「捨てる・・・・?」
店主「そ 捨てる
君が材料にした本なんか比じゃないくらい
もういーっぱい捨てる
たぶんおやじさんもうそうしてきた
古本屋になって知ったけど古本屋って本を捨てるのが仕事みたいなとこあってさ
店に置く本を生かすために泣く泣く死んでもらう本がいっぱいあんの
僕らは商売のためにそうする。芸術家は表現のために
そうしなきゃいけなかったんでしょ?
同じだよ」
・・・(本書より抜粋)・・・・・
成長した南くん、改め南先生は
ある生徒の一人に“懲らしめ”られる。
しかしその生徒の言動はかつて自分が犯した事と同じ、と気づく。
十月堂を訪れなければわからなかった。
一巻では南くんに対して、
あまり良い印象を持たなかったわたしをはじめ読者も多いだろう。
それが三巻では、、、ううっ。。
涙涙のラスト、である。
酸い甘いも経験した大人だからこそ
共感の嵐、となるはずだ。