
滋賀県、と聞いてあなたは何を思い浮かべるだろうか?
琵琶湖、彦根城、ひこにゃん・・・。
など。
滋賀をこれほどまでに知る機会、というのは
関東地区に住んでいて、滋賀にゆかりもない私にはそうそうない。
実際に訪れていないのだから尚更だ。
けれど滋賀に興味を持つことになることは確か。
『成瀬は信じた道をいく』
宮島 未奈 著
新潮文庫
1週間前に
『成瀬は天下を取りにいく』のブックレビューをした。
あまりに面白くて読み終わる前に書店に走り、
続編
『成瀬は信じた道をいく』を購入した。
こんなことは
20歳ころのシドニィ・シェルダンの小説を読んで以来だ。
今回も期待を裏切らなかった。
というより
期待を大きく上回って、驚いた。
月並みな言葉で申し訳ないが
とにかく文章が読みやすくて面白い。
ストーリー展開、キャラ設定、細やかな機微の情景。などなど。
まるで自分が物語に入り込んでいるような気分になる。
1話完結ながらもオムニバスになっており、最後には繋がっていく。
さらに続編では
成瀬あかりを取り巻く人間関係がまた新たに物語を作っていく。
この小説のすごいところは
クレーマーを題材にしてしまうこと。
勝手ながら、宮島氏はかなりのチャレンジャーと思う。
クレーマーに辟易する店員を題材にする、ならわかるが、
クレーマー自身の心の中を丁寧に描いた作品はこれまであっただろうか。
P101・・・・・
今日もわたしはフレンドマートにお客様の声を響かせる。備え付けのボールペンはインクが切れていることが多いので、マイボールペンを持参している。インク代が自己負担になってしまうが、ストレスなく書くためにはやむを得ない。さっき我が身に起こったことを、相手に伝わるように丁寧に説明する。
・・・本書より抜粋・・・・・
冒頭から引き込まれるのは、この一文だけでもお分かりになると思う。
クレーマーとして登場する、呉間 言実(くれま ことみ)。
ネーミングセンスも『クレヨンしんちゃん』並みに素晴らしい。
ただ嫌なやつで終わらせないのが、真髄。
言実の夫・一雄の言実とは対照的な人懐っこさが、またいい。
面白い文章とは?について読みながら考えた。
小学高学年の子が読んでもわかる文章?
それもそうかも知れないが
この“成瀬シリーズ”に触れ、それだけではないような気がする。
誰かの、AIの任せの、“自分の言葉ではない”文章は、やはりつまらない。
お膳立てされた綺麗な言葉はどこか他所他所しくて他人事になる。
わたしが欲しいのは
生身の泥臭さと、そっと感じる「気配」でいい。
著者の宮島未奈氏は、滋賀県大津市在住。
成瀬あかりと同じ京大出身。
これは成瀬が書いた文章だ。と勝手に想像を膨らませる。
成瀬のいる滋賀をもっと知りたくなる、そんな小説だ。