
売れない本は、面白くないのか?
『本なら売るほど(1)』
児島 青 作
KADOKAWA
最近、どこの書店でも平積みになっていて
廃れゆく本屋の再生物語か?
世の中の“売れているもの”に、ややアンチな見方をしてしまう。
偏った先入観で何度か購入を見送った。
そんな折、
中2の娘がお小遣いで買ってきた。
「これ、面白いよ」
子供が面白い、と言っているものなら信じてみようじゃない。
やっと手に取ってページを捲る。
読み進め、価値観が崩れた。
初っ端から、稚拙な感想で恐縮だが
ものすごく面白かった。
それ以外、言葉が見つからない。
こんなに“入り込んだ”のは何年振り、だろう。
通勤の電車内で一気に読んだのだが、
途中で顔を上げ
「あれっ?私は今、どこに向かうのだっけ?」
と一瞬行き先を忘れてしまったほどだ。
そのぐらい没頭した。
短編の1話完結になっており、
古本屋『十月堂』店主の若林のもとに訪れる人たちの交差を描く。
「買う」「買わない」
十月堂を訪れる客に「買う客」か「買わない客」か?心の中でジャッジする店主。
その確率は当たっている。
昨今、本は売れない、と言われている。
全国の書店の閉店ラッシュも社会問題になっている。
世には、本好きの本屋好きも沢山いるはずなのに。
本なら売るほど、あるのに。
P8・・・
「古本屋は本と本好き相手の商売かと思いきや、本に興味がない人が本を捨てに来る場所でもあった」
P12・・・
「人目を忍んで不良在庫の死刑執行をしてせいせいした気分になっている俺が?」
・・・本書より抜粋・・・・・
閉店間際の古本屋の後継者として、
夢打砕かれるも、人との出会いがある。
どの人も抱えているものがあり、
それは特別い大きなものではなく
すぐそこにある、他人から見たらごくごく些細な問題、だったりもする。
でも、そこがいい。
誰しも経験し(似たような事)たことがあるような気持ちになる。
女子高生の年上の男性への憧れ。
ただただ本が好きで、家中本だらけにしてしまう男性。
着物の着方を他人から注意され自分軸が崩れそうになる女性。
「好き」と言う気持ちを抑えられない人間の性(さが)。
他人に何と言われようとも、そんなの関係ないじゃない。
そっと背中を押してくれる。
とりわけ好きな回がある。
第4話の「201号室入居者あり」
男性二人が本棚にペンキを塗るシーンから始まる。
あれ?舞台は十月堂ではない?
この二人、ホームセンターの店員と客。赤の他人同士。
たまたま家が隣同士だったよしみで付き合いが始まる。
片方は本のマニア、かたやもう一人は本も読まない若者、趣味の映画と言っても大衆映画。
趣味や性格も真逆の二人でありながら、
不器用なジョージ(愛称)の家の本棚を作る手伝いを
ホームセンター勤務の田部が見事な手捌きで助ける。
お互いが凸凹で面白い。
ださくて、カッコ悪くて、不器用で。
大好き。この話。
まだまだ知らない本が世には山ほどある。
まずは娘に感謝。
続編は私の財布から出すぞ。
もっともっとこんな素敵な本が売れますように。