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2026.10.21星新一【ノックの音が】ブックレビュー

 

 

 

信じるのは自分だけ?

ノックの音が自分の知らなかった世界を呼び込む。

 

 

 

『ノックの音が』

星新一 著

新潮文庫

 

 

 

 

1 長く愛される本

 

星新一、といえばショートショートの代名詞。

星氏、生誕100年、だそうだ。

知らない人はいないだろう。

 

書店でフェアを開催しており、思わず懐かしさと共に再び読んでみたくなった。

20代によく読んでいた星新一の本である。

 

 

6年前にコロナ禍になり、

家から一歩も出ることができなかった長男から

「図書館で星新一の本を借りてきて」

とリクエストがあったのも、この頃。

 

図書館に出向き、

いくつかの本の中で、手に取った一冊であった記憶がある。

 

年を跨いで、世代を超えて、短編小説だから読みやすい。

それだけではない。

今回久しぶりに読み、秀逸なセンスだと改めて思った。

 

 

 

 

2 導入とオチ

 

「ノックの音がした」

15作ある、どの作品もこの一文から始まる。

 

 

『あとがき』で星氏は

「ブザーではなくノックにした」と記されている。

 

 

p199・・・・・

 

しかし、ノックとブザーでは、どこか感じ方がちがう。

ノックだとよくも悪くも、人間的な何かがある。たたき方によって、訪問者の見当がつけられる。

ブザーだと電線なるものが中間にあって、人間性がうすれてしまう。

 

・・・本文より抜粋・・・・・

 

 

確かに突然の訪問者に対して、主人公たちは

ノックやその後に続く挨拶に敏感になり、想像力を膨らませ、

これから起こる何かを楽しみにしているようでもある。

 

 

さらに訪問者によって、状況が一転する。

大どんでん返しが待っている。

主人公の気持が次第に壊れていく。

 

 

着地点は違えど、どの作品も人間の愚かな部分を露呈した、

風刺とも取れる、実に小気味のよい終わり方、である。

 

 

 

 

3 人の心を動かすのは?

 

今朝の情報番組で

『JR四ツ谷駅の除草作業でヤギを使って、

駅の周りの雑草を食べさせ掃除した』とのこと。

 

画面には旧斜面にある雑草をヤギがむしゃむしゃ食べている。

 

突如現れた2匹の名前のついたヤギ。10月初旬から取り入れたそう。

通りすがりのサラリーマンや学生たちが嬉しそうにテレビのインタビューに答えていた。

朝から、なんともほっこりするニュースである。

 

都会のど真ん中にヤギ。とてもいいアイデアだと思った。

 

 

とかく

フツーだったら、前例に倣って、多くの意見を優先させがちである。

 

けれど、きっとこのアイデアを取り入れたのは

意外性もさることながら

人間では難しい斜面の除草だったり、人を驚かせるユーモアだったり。

 

 

でも、地域によっては今でもあるだろう。

かつて人間がヤギをこうやって使っていた事を忘れている、だけなのだ。

 

 

人間の心が動くのは、こんな足元を見落とした時に

目の前に現れるちょっとした出来事、なのかもしれない。

 

 

 

話が飛んでしまったが、

星新一の本もまた、このエピソードに通じる。

 

 

自分を過信して何かを置き忘れていないだろうか、と。