heya-koto

BLOG

2026.08.29宮島未奈【成瀬は信じた道をいく】ブックレビュー

 

 

滋賀県、と聞いてあなたは何を思い浮かべるだろうか?

 

 

琵琶湖、彦根城、ひこにゃん・・・。

など。

 

 

滋賀をこれほどまでに知る機会、というのは

関東地区に住んでいて、滋賀にゆかりもない私にはそうそうない。

実際に訪れていないのだから尚更だ。

 

けれど滋賀に興味を持つことになることは確か。

 

 

 

『成瀬は信じた道をいく』

宮島 未奈 著

 

新潮文庫

 

 

 

1 シンプルに面白い

 

1週間前に

『成瀬は天下を取りにいく』のブックレビューをした。

 

あまりに面白くて読み終わる前に書店に走り、

続編

『成瀬は信じた道をいく』を購入した。

 

こんなことは

20歳ころのシドニィ・シェルダンの小説を読んで以来だ。

 

 

今回も期待を裏切らなかった。

というより

期待を大きく上回って、驚いた。

 

 

月並みな言葉で申し訳ないが

とにかく文章が読みやすくて面白い。

ストーリー展開、キャラ設定、細やかな機微の情景。などなど。

 

まるで自分が物語に入り込んでいるような気分になる。

 

1話完結ながらもオムニバスになっており、最後には繋がっていく。

さらに続編では

成瀬あかりを取り巻く人間関係がまた新たに物語を作っていく。

 

 

 

 

2 クレーマーを描く

 

この小説のすごいところは

クレーマーを題材にしてしまうこと。

勝手ながら、宮島氏はかなりのチャレンジャーと思う。

 

クレーマーに辟易する店員を題材にする、ならわかるが、

クレーマー自身の心の中を丁寧に描いた作品はこれまであっただろうか。

 

 

P101・・・・・

 

今日もわたしはフレンドマートにお客様の声を響かせる。備え付けのボールペンはインクが切れていることが多いので、マイボールペンを持参している。インク代が自己負担になってしまうが、ストレスなく書くためにはやむを得ない。さっき我が身に起こったことを、相手に伝わるように丁寧に説明する。

 

・・・本書より抜粋・・・・・

 

 

冒頭から引き込まれるのは、この一文だけでもお分かりになると思う。

 

クレーマーとして登場する、呉間 言実(くれま ことみ)。

ネーミングセンスも『クレヨンしんちゃん』並みに素晴らしい。

ただ嫌なやつで終わらせないのが、真髄。

 

言実の夫・一雄の言実とは対照的な人懐っこさが、またいい。

 

 

 

 

3 面白い文章とは?

 

面白い文章とは?について読みながら考えた。

 

小学高学年の子が読んでもわかる文章?

 

それもそうかも知れないが

この“成瀬シリーズ”に触れ、それだけではないような気がする。

 

 

誰かの、AIの任せの、“自分の言葉ではない”文章は、やはりつまらない。

お膳立てされた綺麗な言葉はどこか他所他所しくて他人事になる。

わたしが欲しいのは

生身の泥臭さと、そっと感じる「気配」でいい。

 

 

著者の宮島未奈氏は、滋賀県大津市在住。

成瀬あかりと同じ京大出身。

 

これは成瀬が書いた文章だ。と勝手に想像を膨らませる。

成瀬のいる滋賀をもっと知りたくなる、そんな小説だ。