ちゃんと、きっちり、完璧に片付けなければいけない。
そう思っていないだろうか?
空間にも余白が必要なように、
心もにも余白が必要なように、
片付けにも余白が必要だ。
程よく、いい加減に「片付け」をする提案をしたいと思う。
以前クライアントに
「整理収納アドバイザーになりたいんです」
と言われた。
2級講座やセミナーでは真剣にノートを取り、
訪問の片付けでは和やかに話しながら作業に取り組んだ。
ただ正直なところを申し上げると、
整理収納アドバイザーになるまでには相当な時間がかかるだろう、と感じた。
目的がとても曖昧だったのだ。そして家の現状を拝見しすぐに感じた。
整理収納アドバイザーの資格を取れば、仕事としてすぐに収入がある。
と彼女はその目標にまっすぐに進んでいるようであった。
運良くクライアントがついて軌道に乗ることがあるかもしれないが
たいていは現状はそんなに甘くは無い。
自身の経験談も話しながら2級取得からプロ資格の1級までにどのくらいの
ハードルがあるかも話した。
そして彼女の家の中は、
整理収納アドバイザーである私が10回以上訪問するくらいに
ズバリ、散らかっていた。
リビングには食べかけのお菓子の袋が落ちていた。
押し入れの中には子供の衣類文具が所狭しと押し込んでいた。
玄関には積み上げられたダイレクトメールや開封していない段ボールが山積みだった。
片付けをしているのになかなか進まない。
一進一退。といったところだろう。
一部屋片付けてもまた他の部屋や空間が散らかる。
他人の家を片付ける仕事を、なぜ選ぶのか?
「他人より自分の家の方がまずは先」
彼女にプロとして素直に伝えた。
なぜ片付かないのか、その理由がわかった。
ある日、再び訪問に伺い
とても嬉しそうな彼女が
「金内さん、見てください!」と言ったその先に
階段下収納の中、完璧に整えられた空間が突如現れた。
その中は新調した棚を設置して洗剤や家電類がアドバイス通り揃えられ、
その空間は、物と物に余裕が無いのが少し気になった点ではあったが、綺麗に整えられていた。
「おお、綺麗。すごいですね!」と褒めたが
その階段下収納の周りの床には、洗面所から流れてきた洗濯物が広がっていた。
厳しい物言いになるが
まさに、木を見て森を見ず。
そこだけ片付けても他が全く片付いていない。
完璧を求めるとこうなる。
高い目標も綺麗に片付けることも大事なことだが
それよりも
現在の自分の立ち位置や
全体を俯瞰して見ることや
何から取り組んでいけばいいのか。
それらをすっ飛ばして
いきなり片付けが上手になることは不可能だろう。
着実にきっちりと片付けをしたいのならば
「完璧に片付ける」ことを捨てることも大事だ。
適当ないい加減さも必要である。