
好敵手。ライバル。
あなたにはいる(いた)だろうか?
誰よりも絵が上手いと思っていた小学生の藤野に
ある日突然、好敵手が現れる。
京本という、のちに親友となる人物だ。
映画『ルックバック』
是枝 裕和監督
ライバル同士と言っても、
引きこもりで小学校に一度も登校していない京本は世間を知らない。
世間だけでなく自分の天才的な才能を知る由もないのだ。
一方で、京本の画力に驚きを隠せない藤野。
次第にまだ見ぬ京本に、嫉妬や反発を覚え一度は漫画の道を諦めようとするも、
卒業式の後、証書を渡しに京本の実家で初めて二人は出会う。
「ワダシ(私)、藤野先生のファンなんです!」
突然の告白に驚く藤野。
単純で負けず嫌いな藤野は京本と手を繋ぎ、漫画を再び描き始める。
中学でコンテスト入選、その後漫画家の道を進むことになった二人だが。。
アニメ『ルックバック』は実写版になる前に、3回観た。
シンプルな構成でありながら、心情を丁寧に描いたバランスのいいストーリーである。
我らが是枝監督がこれを“料理”したらどうなるんだろう?
映画化する、と知ってからワクワク。首を長くして待っていた。
観た後、劇場で一人スタンディングオベーションしたくなった。
いやーーー素晴らしい!!

大抵アニメが実写になるとガッカリすることも少なくはない。
超えた?いや、アニメはアニメでいいこともあるが、
何しろ風景とそこに流れる音楽の美しさったら。
作者でもある藤本タツキ氏(「藤」野と、京「本」の、二人の苗字の1文字!ご本人の話なのだと想像する)の郷里である、
秋田県にかほ市を舞台に
四季折々の光と影の中に人間が存在している。秋田に聖地巡礼してみたくなる。
小学校の教員役のクドカンこと宮藤官九郎、藤野の母の野呂佳代、集英社編集員の菅田将暉。
主役の二人と何とも良〜い距離感を保って接している。これはアニメでは描かれなかった是枝イズムだろう。
野呂佳代の母親役も親近感そのもの。
さらに
え?!うそ?『万引き家族』のあの少女だった佐々木みゆちゃんは、藤野の姉役で抜群の存在感を放っている。
ただでさえ目立ちそうな役者陣も、スッと違和感なく入り込む自然体な演技。
ストーリを忠実になぞりながら、実に人間味がプラスされた作品である。
先ほど終わった第83回ベネチア国際映画祭では映画祭公認独立賞で五つの受賞表彰を受けた。
惜しくも、金獅子賞には届かなかった。が!
この映画は私に取って大切な思い出深い作品になった。
日本人だったら誰しも原風景として流れるであろうDNA。
静かでありながら鮮烈に残る美しいだけでない現実味のあるシーンの数々。
二人のライバルとして互いを尊敬しながら生きる友情。
綺麗事だけでない、それがいい。
特に彼女たちの部屋は、実際のお宅を使っての撮影だったとのことで
カラーボックスにあったジャンプや、レジ袋がかかった蓋のずれたゴミ箱であったり、
ストーブの上のアルミホイルに包まれた焼き芋だったり。

是枝監督は今回「音」を意識して作品作りをされたそうだが、
京本の漫画を描く際に、口にする「すーっ、すーっ」や「しゅっ、しゅっ」も実写版での驚きでもある。
今回中2の娘と二人で観に行ったが、
次回はドルビーアトモスのある映画館に、
「音」を聴きたく、夫と二人で再度映画館に足を運ぼうと思っている。