
向田邦子著 『阿修羅のごとく』
「女の踵を見れば殿方とご無沙汰かどうかわかる」
四姉妹での会話の一幕だったと記憶している。
この四姉妹の母・藤のふじのことを遠巻きに言っている。
父は愛人(と連れ子)をかくまって養っている。
そんなことを娘たちは知ってか知らずしてか、
「これお母さんの踵みたい」
鏡開きで焼いた餅をネタに
カサカサの母の踵みたいだと大笑い。
笑い過ぎて差し歯に引っかかった餅で歯が取れてしまったり。
日常をカラリと描きつつも、向田作品ならではの鋭い視点にどきりとする。
この本を読んだのが約30年も前のこと。
女って怖いけれど、たくましい。
衝撃的な言葉だった。
それからと言うもの、
かかとを気にするようになった。
紫外線が日に日に気になるこの時期。
先日も化粧品カウンターで美容部員に
「日焼けしてますね。日焼け止め塗っていますか?」と聞かれ
いいかげんな返事をしたら
「ダメです!絶対に日焼け止め塗ってください」と怒られてしまった。
日焼け止めを塗る習慣もなく、
日焼けに対して少々ナメているところがあるかもしれない。
まだ日傘もサングラスも出していない。
これからボチボチ出すつもりだが
これらがバッグで1gでも荷物になるのが嫌なのだ。
それより、と踵のケアは毎日風呂上がりに保湿する習慣はある。
日焼けする顔よりも踵優先だったりもする。
殿方とご無沙汰かどうか、はさて置き。
踵と言うのは
ふとした瞬間に目につく場所である。
夏にはサンダルを履き、踵を出される方も多いかと思う。
私ごとだが
50代を過ぎたあたりからサンダルはめっきり履かなくなった。
もっぱらローヒールのパンプスばかりだ。
ライフスタイルの変化もあるが、
半分裸足のようなスタイル?で街を闊歩するのは
少々気恥ずかしくもある。
なぜなら
それこそ手入れがきちんとされていないから、だ。
ペディキュアも剥がれていたらダメだ。マメに塗り直す。
そもそも足(手も)の爪の形が悪い。
足メンテナンスに遠慮がちになるのは当然っちゃ、当然。
それはそうと
公共でのエスカレーターや、電車を待っている前の女性の踵を観察する。
踵もそうだが、足の爪に何も塗っていない方の多いこと。
これは、実はすっぴんで外を歩くよりも恥ずかしいのでは?と思ったりもする。
偉そうなことは言えないが。
「人に見せるためにサンダル履いているんじゃないわよ!」
と当然反論もあるだろう。
そう言う方には大変申し訳ないが
女としての「たしなみ」を忘れてはいけない。と思うのだ。
翻って向田邦子である。
本当に圧倒的な言葉の選び方・センス。
「踵」なんて
一番後回しで気にしなくても良さそうな部位だけれど、
そこをあえて女である私にグサリと突きつけるのだから。
女として終わってはいけない。
ここに女の本質が問われているのかもしれない。
顔もいいが、踵もね。
美容部員には、またまた怒られそうだが
個人的には日焼けした肌にサンダルを履くのが理想、だったりもする。