
夢が叶うのなら。
手段選ばず?
欲望は尽きない。
果たして
叶う夢は幸せをもたらすのか?
大切に育てた一人息子が亡くなった。
そんな夫婦のもとに、一人息子そっくりなヒューマノイドがあらわれる。
原案・監督・脚本・編集
是枝裕和
キャスト
綾瀬はるか/大悟(千鳥)/桒木里夢ほか
上映開始から休みの朝イチに夫と2人で映画館に意気揚々と出向いた。
なんせ、大好きな是枝監督である。

大きな期待をしていた。
が
観終わった後、少しモヤっとしたものが残った。
何が言いたいのかよくわからない。
これが正直な感想だ。
ヒューマノイドはじめ最新技術を駆使したSFなのか、
はたまた人間とロボットの家蔵愛なのか、
欲望を手にしたがる社会への警鐘なのか。
観ながら監督の言いたいことであろうメッセージを探した。
鑑賞後、劇場でパンフレットを購入し
監督のインタビュー記事を読み込み
ようやく「これじゃないか?」と思うシーンを思い出した。

劇中で
ヒューマノイドの翔を囲んで3人で寝室のベッドで読み聞かせをしている。
サン=テグジュペリ『星の王子さま』
「肝心なことは目に見えない」という誰もが聞いたことはある本のメッセージだが
箱の中にある存在がわからない羊について
翔が音々に「箱の中にいる羊ってどうしてわかったの?」と聞いている。
答えに窮している音々に対し、横から健介が
「メェーって鳴いたんじゃない?」(というようなセリフだったと記憶している)
さらっと言ってのけたのだ。
このやりとりが印象に残っている。
多くの場合、自分の都合のいいように(見たくないものは)見ようとしていない。
けれど
時と場合、人によっては
たとえ目には見えなくても、耳で聞いて(見たくないものも)その存在を確認できることもある。
見たくないものを見る。
存在を認めようとすること。
果たして、この健介のように
子供の別れ、という現実を受け入れるだろうか?
このテーマでもある子供の死でもあるが、子供の巣立ちもまた「別れ」なのだ。
翔と出かけた後、記憶のある翔に生前の現場の足跡を辿ろうとするも
健介が警察に不審者扱いされ捕まってしまう。
翔に「おじさん」と最初に呼ばせたのは他でもない健介なのに。
緊張感がありながらも思わず笑ってしまう、好きなシーンだ。
つるんと淡々とした多くのシーンの中で
大悟をはじめ、余貴美子などの
人間の根底にある、泥臭い演技が際立っていた。

ヒューマノイドに対して懐疑的な父や祖母。
「ただいま」と言っているのに「おかえり」ではなく「いらっしゃい」と意地悪になったり
ヒューマノイドの子供たちが、音々の実家に現れた際「子供は嫌い」と言ってのけたり
それでも現実を受け入れながらも
健気なヒューマノイドの翔と次第に関係を築いていく。

子供との別れを経験した当事者にしかわからない悲しみや痛みがある。
子供の別れについても監督は触れているが
巣立つ子を目の前に、夫婦がどう立ち直っていくか?
この劇中での、本来の隠れたメッセージだろう。
ああ、まだ気持ちの整理ができていないようだ。
私は「いつまでも不完全でありたい」と心の中で願っているフシがある。