私の夫(55歳)はダサい。
とうとう、先日、19歳の次男にも
「パパってどうしてあんなにダサいんだろう」と私に話しかけられた。
最低限の身だしなみはする。
私が上下ユニクロで買ってきたものを着ているだけだ。
何かの集まりがあればそれなりに気を使う、が、結局ユニクロだ。
ユニクロが悪いわけではない。本人が悪いのだ。
ユニクロでも年を重ねても、カッコよく決まる人は世の中にたくさんいる。
きっと腹が出ているのと、白髪を染めないこと、身なりを気にしないことが原因だ。
本人はダサいことを全く気にしていない。
何年か前、娘が保育園に通っている時。
朝の送りを主人だったのだが
よその子から主人がお父さんではなく、おじいちゃんに間違われた。
それでも夫は笑っていたくらいだ。
かっこいい旦那さんがいいか?
かっこいいお父さんがいいか?
実は私もそこは気にしていないところである。
イケメンには興味がない。
だが、全く、というのは嘘だ。
少し前に、俳優の玉木宏さんを外出先で見かけた。
プライベートらしく、ラフな格好だったが、
遠目から見ても思わず振り返るくらいのオーラだった。
その時、夫も一緒だったが
玉木さんを近くで見て「美しい横顔だった!」と鼻息を荒くしていた。
夫の男に対する「美しい」は初めて聞いた気がする。
カッコよかった。ご本人を見て思わず興奮した。
でもそれは何か「絵画」を見ているような、いいものを見た、ありがたい感じだ。
その時は流石に遠目でうっとりして眺めた。
その後、テレビCM、電車広告、スーパーの宣伝写真、で、玉木さんを拝見した。
あの時を思い出し、また夢見心地になった。
男とか女とか超越した美しさ、だ。
私にはこれまで一度も思ったことがないが
推しのいる人はこんな気分なのだろうか。
それは毎日元気が出るだろ、そりゃ。
現在もまだ思い出してはうっとりする時があるが
だんだんとその気持ちも薄れてきた。
「そっち」には行かない。
「こっち」にいる。
こっちにはダサい夫。がいる。
子どもが夜遅くに帰ってくるまで、
ソファーでパンツ一丁で横になって待って寝ている。
それを見て子どもたちは「だらしない親父」と思っているだろう。
旅行の計画は綿密に調べ、キチキチとした、分刻みのスケジュールを立てる時もある。
それに付き合わされる私たちは言う「添乗員さんか?」
「妻に嫌われたくない」を公言し、
とにかく私の家事フォローを毎日する。洗濯物だってどうしたら妻が機嫌が悪くならないようにスムーズに取り込めるか?「お伺いを立てる」
ちなみに夫の「推し」は家族、だそうだ。
家族のために、身なりも構わず、自分のことは後回し。
そう、だからダサくなるのだ。
一見、夫が尻に敷かれているように見えるが
実はその逆だ。
手のひらで転がされているのは、私の方だ。
行き過ぎた態度を取れば、ちゃんと叱る。
迷った時には頭の中を整理してくれる。
感謝の言葉をかけたら「うるせえな」と返す。
平等であり、穏やかで、ドライな人間だ。
ダサくたっていいじゃないか。
腹が出ようが、白髪が増えようが、そんなことはどうだっていい。
私だって夫のことは言えない、口うるさい面倒なババア、なんだから。
お互い様だ。