
Netflixで3回視聴。
あまりに面白かったので、勢いで立ち寄った書店で漫画本も購入した。
・・・・・・・・
『ひゃくえむ。』
新装版 上/下
魚豊(ウオト)著
・・・・・・・・

『チ。』の作者、魚豊氏のファンである、娘(中1)からの勧めで、
最初は何気なく観たが
これがずっと心に残る素晴らしい作品だった。
今、頭の中は『ひゃくえむ。』一色。
熱の冷めないうちに記録したい。
漫画本は劇場版とは内容が変わっている箇所もあったが、
本筋は変わらないで楽しめる。
この話の軸となる主人公、
トガシと小宮。二人の少年が登場する。
小学生の頃から、ずば抜けて足が早く敵無し、のトガシ。
足が遅く「気を紛らわすため」だけに走っている転校生、小宮。
対照的な二人だが、
小宮と出会うことでトガシの人生は変わっていく。
また小宮もトガシの影響を大きく受ける。
トガシの献身的な指導で、走りがメキメキ上達する小宮。
それは高校生ころから、トガシを脅かす存在になる。
最初はトガシの“影”として描かれていた小宮だが
いつしか逆転して小宮が映っているのポスターの前を下を向き歩くトガシ。
この対比が見事な演出となるのだが、
と同時に、二人でひと組。お互いが無くてはならない対の存在であることを象徴している。
アスリートは孤独だ。
特にこの本での100m走者の選手たち。
劇場版には登場しなかったが、漫画本で登場した、
トガシの高校時代のアメフト部との交流がある。
チームプレーと個人プレー。の対比もまた見(読み)どころ。
個人プレーだからこそ、深く自問自答することも多いのだろう。
アスリートたちの哲学的な言葉が散りばめられている。
あまりに消化できなかったから、3回も観たのだ。
特に後半、トガシの先輩の海棠(かいどう)の言葉にハッとさせられる。
・・・・・
P250より引用
「現実は勝手に消えてくれない」

15年もの現役ながらも紆余曲折あったレジェンドの言葉。
p254より引用
「いつも最後の最後で負ける現実
一歩先に奴がいる現実
小宮なんて若手が台頭した現実
万年2位なんて呼ばれる現実
今じゃそのあだ名すら明け渡してしまった現実
1秒1秒老いていく現実
ジリ貧な現実
生まれる時代が違えばなんて腐るほど言われた
不思議なことにこの世は俺が勝てない“現実”で溢れている。
が、これも不思議なことに
とうの俺は「次こそは俺が勝つ」と信じきれている。
なぜかわかるか?」
「いえ」と、トガシ
「現実は逃避できるからだ」
・・・・・・・
現実逃避、というと
現実を見ようとしないで逃げる、というイメージがあったが、そうではない。
目を見開いて、現実を知った上で向かう。
これまでの認識とは、全く真逆の意味合いだった。
右肩下がりだったが、ある一件で吹っ切れたトガシ。
相変わらずマイペースで崩れない小宮も、また悩んでいた。
彼らは、ずっと「問い」続けている。
これでいいのだろうか?と。
答えなんか簡単に見つかるはずかない。
自分が動かなければ。
現実逃避しなければ。
いよいよ最後のシーンでは
たった10秒という一瞬の煌めきの中で答えを見つけ出す。
感動のシーンだ。

社会に出て。
環境が変わって。
人間関係が変わっても。
変わらないものはある。
この本が教えてくれた。