同じマンションの友人から、よく野菜をいただく。
彼女は、こちらが在宅時であっても
ドアノブに野菜をビニールの取っ手をひっかけて
LINEで「野菜(ドアに)かけといたよ!」と時間差での連絡をいただく。
連絡をもらって初めて、きゅうりの存在に気がつき、
ドアノブにかかったビニールに入ったきゅうりを、キッチンに移動する。
ピンポンして、在宅であれば会って話せばいいのかもしれないが
顔を合わすことはほとんどない。
彼女も子供が4人いる。
状況も状況だ。彼女自身忙しいのもあるが、
察してくれているのだろう、と勝手に思っている。
はたから見たら水臭いようだが、
私は私で、人さまからいただいた野菜などをお裾分けするため
彼女の家のドアノブにかけて、同じように時間差で連絡をする(たまにうっかり忘れてしまって彼女から連絡がくる「もしかして?」と)
こんな時代だが、令和版「物々交換」している。
いただいた野菜を食べた後は、味のお礼をする。
忘れっぽい私だが、これだけは忘れたくない。
「水々しくて美味しかった!ごちそうさま」
何度かのLINEラリーで、
彼女がご主人と登山を昨年から初めたこともわかり、
仲睦まじい笑顔のピースサインの登頂したツーショット写真も
思いがけず、ご馳走になった。
子どもも少し手が離れ、年に4、5回登る山はどんな景色なんだろうか。
未だバタバタだろうが、夫婦二人の時間をエンジョイしておるな。
「道の駅で買いすぎた」という、ずっしりと重く太ったきゅうり。
包丁を入れた瞬間にしっとりと刃にくっつく感じといい、断面の水々しさから確信する。
これはうまいヤツ、だと。
ちょうどその日の夕飯で、買っていたきゅうりを使い切ったところだった。
なんというタイミングなのだろう。
我が家の冷蔵庫事情まで把握しているとも思えないが、
以前彼女と
「どんだけあっても困らないのが野菜、だよね!」
ガハハと笑って話したことがある。
副菜にも、カサ増しにも、れっきとした一品にも、なる。
レパートリーをいかに単調にしないために。
きゅうりだったら、サラダに、浅漬けに、ごま油で炒めても、
今の時期だったらさっぱりと酸味が欲しい、梅きゅうが気分だ。
いただいた野菜を家族で美味しく食す。
野菜は我が家の料理をサポートしてくれる。
実はもう一人、野菜をいただく人物がいる。
マンション管理人のおじさん、だ。
ある夕刻の帰宅時
「あ、金内さん、ちょっと」
と管理人室の窓から、管理人のおじさんから声をかけられた。
その後、ごそごそと奥の方から、
じゃがいもや茄子やピーマンなどの野菜が入った、ずっしりと重いビニール袋を
窓口から私にぎゅっと押し付けた。
「家庭菜園で作っている野菜が余ってさ。二人暮らしで食べきれないんだ。持っていってくれる?」
「えっ?? いいんですか?!助かります!」と、
すこし戸惑ったような表情とは裏腹に、手はすでにビニールを握りしめている。
ああ、ありがたい。本当にありがたい。
流石に貰いっぱなしではいけない、と思い、
後日、近くの自販機で買った、冷えた缶コーヒーとスポーツドリンクを渡した。
「もうこんなことはやめてくださいね」
と管理人のおじさんは謙遜していたが、そうもいくまい。
「いやいや〜。それにしてもスーパーで買うのと全然味が違いますよ。
子供達もよく食べて。これ美味しいね、と話したんですよ。
それで、美味しかったから。。
図々しいけれど、また、、いただきたいなって思って」
管理人のおじさんの顔が緩んだ。