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2024.01.1779歳男性ひとり暮らし/遺品整理から始まった片付け

 

昭和のオヤジ、あるある。

 

古い電球から新しい電球に変えられない。

自分の子供のオムツを変えたことがない。

キッチンに立って調理したことがない。

 

団塊の世代と言われている、昭和22年〜昭和24年ころ生まれの親世代。

団塊ジュニアとして、そんなオヤジを持つ私たち。

私より年配の女性陣も

「昭和のオヤジは当時、威張ってばかりで何もしてくれなかった」という話題で盛り上がることがよくあります。

 

昭和のオヤジ、威張ってばかりで、家庭を顧みず、家事一つもしないで

どうしようもない???

 

本当でしょうか?

 

ある1人の昭和のオヤジ、の話をしたいと思います。

 

 

79歳、男性。Nさん。

最愛の妻が亡くなり3年。

男やもめに、なんとやら。一人暮らしが始まります。

遺品整理のついでに「まずは冷蔵庫から」と思って冷蔵庫の扉を開けたら、

化石のようになった、干からびた、期限切れの食品、がいくつも出てきたそう。

 

Nさん曰く

「妻がいる時はキッチンは『女の城』だから、(冷蔵庫の中を見ることがあっても)遠慮して何も言わなかった」

 

…なんてお優しい。

奥様がいなくなって3年目。

奥様と2人暮らしの時は、家事は奥様中心、Nさんは特に家事をしてこなかったそうです。

そんな家事(ほぼ)未経験のNさん。

 

さて、冷蔵庫から始まった、片付け。と家事。

男の一人暮らし、さぞかし寂しく、不便で、大変そう、と思っていませんか?

 

価値観がぶっ壊れます。

 

【1 ひとり暮らし「自分のために」暮らす】

Nさん宅の、冷蔵庫。

 

ドア裏のポケットです。

開封した鰹節を洗濯バサミでポケットに挟んで、目につきやすいようにしています。

ビールの前には、冷えたグラスがあり、美味しい時間をスタンバイしています。

さらにものが埋もれて見失わないように、高さ別、ジャンル別、に分類されています。

 

野菜室です。

背の高い麺つゆはドアポケットだと取り出しづらいので、引き出しを上手に活用しています。

ペットボトルをカットしアイデア収納にきゅうりなど「立てる収納」空間をうまく使い、

スペースを無駄にしていません。

野菜鮮度保持袋(左上)に葉物野菜を包んでいて、腐らせない意識を感じます。

 

冷凍庫です。

一度に炊くお米をおにぎりにし、おにぎりの具ラベルまで貼っています。

余ることのないように保存袋に入れて管理した食材。

サイズに合わせて食材を分類しているカゴや仕切り。

 

何度も言いますが、

3年前まで家事をやってこなかった、一人暮らし男性の冷蔵庫の中、です。

 

 

【2 老いや死に対して案外「ドライ」である】

冷蔵庫だけでなく、家中の片付けを進めたNさん。

家の中が片付き、綺麗になっていく様子を複雑な想いでいるのは

Nさんの娘。私の友人。私と同じ50歳です。

「片付くのは嬉しい、けれど、終活、死に向かっているようで、なんだか寂しい」

「父(Nさん)には、あまり片付けなくていいからね、と伝えている」

とのこと。

家族だから、そう思うのは当然かもしれない。

けれど客観的に、この冷蔵庫、写真だけでも、見たらわかる。

本当に心から暮らしを楽しんでいる、と。

 

話が少しずれますが、

現在、何名かシニアのお客様宅での片付けに定期的に伺っていますが

ある片付けの現場で、以前、押し入れの中から「素敵に撮れているでしょう」「前撮りだと安いのよ」とご自分の遺影(葬式用の写真)を嬉しそうに見せていただき、どう対応したらいいかと少し困惑した経験があります。ですが

最近ではお客様とは、死生観、死ぬまでにやっておきたいこと、ご主人よりも先に死なない、など。お昼休みの時間やサービス終了後などにお茶をいただきながら 楽しくお話しすることも。

 

老い、死、誰もが来る、いつかの時。

ご本人たちは、子世代が思っているよりも案外ドライ、なのかもしれません。

 

 

【3 終活は「おわり」ではなく「はじまり」】

老いも死も、怖い。

怖いのは「わからないから」。

自分がどうなっていくのか?

病気?老衰?考えてもわからない。

また親だけでなく、自分だっていつ死ぬかわからない。

だからって怖がっていても、しょうがない。

毎日は続いていくのだから。仮にその日が訪れても、自分自身が納得したい。

 

「朝起きてから朝食を食べ終わるまでに、やることを決めて毎日同じ動きをする」

Nさんの言葉です。

 

「明日(突然)自分が死ぬことになったら?」なんて質問が巷ではありますが

愚問かもしれない。

「いつ死んでもいい」と思うと同時に「自分なりに工夫して楽しく丁寧に暮らす」

そう思って行動する日々のほうが、生きている実感を感じると思う。

 

そのために私たちができること。

毎日の暮らし一つ一つを丁寧に。自分を大切に。家族を大切に。

 

 

昭和のオヤジが劇変することだってある。

自分の価値観なんてアテにならない。

 

 

片付けは終わりではなく、はじまりである。

Nさんの行動に触れ、感じたこと。

 

Nさま、写真提供とメッセージありがとうございます。