逃げる、切る、スルーする。
苦手な相手とは「付き合わない」のが一般的にスマート。だが、
覚悟を決めて「付き合う」時もある。
苦手な相手と、どのように「付き合う」?
・・・・・
約10年以上前
長男(現在22歳)が小学4年生ころ、だったろうか。
学習発表会、と言う保護者が参観する行事があった。
一つの教室を机で仕切り、二グループに分かれ児童達が
一人ずつ、思い思いの学んだ事を発表をしていた。
我が家では、欠席の夫に代わり近所に在住の義父母に
孫の成長を見せようと声を掛けて、3人で参観した。
しばらくして
児童たちのざわめきの中、発表が始まる。
その時。
「うるさいぞ!」怒鳴り声とともに
それまでの空気が一瞬ピリつき静まりかえった。
声の主は義父だった。
隣のグループで何人かの男子達が騒いでいたのを注意したようだ。
もちろん叱られた男子達は発表の回ではない。びっくりした男子達。
それから何事もなかったかのように発表は続いたが、前よりも静かになった。
確かに私もうるさいとは感じた。
けれど子供だしと、少しの容赦もあった。
さらに我が子の発表の回ではなかった。
言い訳はいくらでも述べられる。
発表会後、
男子が騒いでいた時に発表していた女の子のお母さんから、何度も感謝された。
「娘の発表が静かに聞けた」と。
それから他の保護者の何人かからも義父の行動に
「ありがとう」と、何にもしていないヨメの私が言われた。
他の保護者も男子達の騒ぎには気にはなっていたが
その男子たちの親が来ているであろう、手前もあって
誰も注意できずにいた。
この一件で、一時ウワサの“金内の爺さん”になった。
正直に言うと、
その一件があるまで、義父の事が苦手。だった。
まず最初の出会いが悪い。
夫から自分の両親を紹介、と言う
ただでさえ緊張する時に
待ち合せ場所で先に到着した、ムスッとした義父(義母も)がいた。
「何時だと思っているんだ。5分前には来るものだ」
最初に義父が発した言葉が「挨拶」ではなく
「お小言」だった。
頭の中の勝手な“にこやかに談笑する初対面シーン”のシナリオが狂った。
時計を見たが、定刻通りか2.3分過ぎていたか。
とにかく「5分前集合」ではない。ことに
義父がご機嫌斜め。
夫が謝ってその場を切り抜けた。
その後
4人で食事をしたが、それ以後の記憶はない。
それよりも
やっていけるかしら。
かなり先行き不安だった。
さぞかし“うるさ型”の親父、と思われるだろう。
もちろんその通り、ではあるが
先日、義母が旅行した時の事
義父宅を訪ねてみると、ひとり肩を落とした義父がいた。
炊飯器のスイッチどころか
買ってきた惣菜をレンジでさえ温められない。のだ。
昭和の親父あるある。
実父も共通する事が多々ある。
アグレッシブな会社員時代とは人が変わったかのよう。
家庭では女は強し。
ヨメとして25年以上、付き合ってきたが、
時代は変わる。
変わらないようで立場や環境が変われば人も変わる。
私も変わる。レンジで義父が温められなかった惣菜を温めた。
あの一件から見えたのは
教室で児童相手に「うるさい!」と怒鳴ったのは
孫たちだけの為でなく、
単純に「聞こえない」と言う理由だろう。今ならわかる。
子供だからとか、その子の親がいるだろうからとか
自分さえ我慢すれば。なんて余計な考えだ。
自分の気持ちに正直に生きる。
ああ、私も義父に正直になろう。
言い返したっていい。
自分の気持ちを伝えていい。
付き合いたくない時は付き合わなくていい。
今の気持ちは至ってフラットな状態だ。
それでも
「付き合って」いくのだ。