火元も無いのに
しょっちゅう、鼻の奥から焦げ臭い、煙の匂いがする。
24時間ずっと、ではないが
ふと仕事や家事の合間に感じる事が多い。
最初は気になり、耳鼻科に行こうか?
と思ったが、いつしか慣れてきたのと
他の匂いも感じない訳でもないので
「まあ、いいか」と病院にも行かず諦めている。
ネットで調べたら
『異臭症』と言う症状だそう。
原因は不明で、直す術も無さそう。
ストレス、加齢、生活習慣の乱れからくる場合がらある。
と書いてあった。
これは確実に「加齢」だ。と自分に見切りをつけ、
同じ症状を抱えている、見ず知らずの他人さまの体調を案じる。
さて、前置きがかなり長くなってしまったが、
そんな鼻が(ついでに目も)バカになっている、私の体験談である。
昨日の夕方のこと。
我が家では、夕飯の支度を済ませたら
家中のかき集めた可燃ごみをまとめ、
マンションのごみ置き場に、パンパンになった45ℓごみ袋を
ごみ置き場に持って行くのがルーティンだ。
いつものように、自宅玄関ポーチで溢れたごみ袋の中身ををぎゅうぎゅう押して、取手部分を縛っていたら
何処からともなく
お香、甘く爽やかな花のいい香りがした。
生ゴミの匂い、だったらわかる。
けれども
直感で
「これは誰か亡くなった故人が来た」
と思った。
念の為
玄関からごみ置き場までにも何処にも
どこかのお宅からか?と探したが
お香の香りはしなかった。
香りはその時だけ、だった。
そう確信したのは
25年前にも同じ体験をしたからだ。
当時、事務職として働いていた
町のクリニックの院長のお父さまが亡くなった時もそうだった。
そのお父さまとは面識はあるものの、
挨拶程度で関係としては密な関係ではない。
その日の朝、出勤前の自宅で
お線香の香りを感じた。
自宅には仏壇はおろか、家を出た際にも近くで
お線香を炊いた香りはしなかった。
職場についたら、院長のお父さまの訃報を、その時初めて聞き
「あの時のお線香の香りはそうだったのか」と、妙に納得した。
話を1に戻す。
昨夕、花のお香を嗅いだ時から数時間経った。
夕食が終わり、食器を洗っていた時に
携帯の着信が鳴った。
相手は父だった。
父は「兄嫁(私の叔母)が、先週病気で亡くなった」
と伝えた。
あの花のお香の香りは、叔母だったか。
と、1人で納得した。
叔母との付き合いの記憶は、
自分がせいぜい高校生あたりまでで止まっている。
約25年前、結婚式に参列してもらったっきりだったが
小さい頃は祖父母が健在だった頃は、親戚で集まった時に
話しかけてくれた。
スマートで賢い、おだやかな叔母だった。
「ああ、そうなんだね。わかった」
父からの電話を切り、祈った。
信心深くもなし、霊感もなし、
年に3回の墓参りも、ある意味「仕事」だと思っているフシがある。
だが不思議な体験は全くないとも言えない。
これはまた別の機会で話せたらと思う。
現実を生きている実感だけはあるが
この体験を何と表現しようか。
自分が感じた、としかいいようがない。
非科学的な話であるが故、
人に言ってもなかなか理解できない部分もあるだろう。
身をもって受け入れるだけ、なのだ。
真面目に捉えてもいいのだろうが
気のせい、と笑ってほしい。
鼻の奥から匂ってくる、煙のように。