昨年末にニュースで知った、脚本家・山田太一さんの訃報。
ドラマ
『男たちの旅路』『ふぞろいの林檎たち』など有名な作品もあるが
つい先ほど『思い出づくり』を14話、何日かにわたり、BS-TBSで全て観た。
どこにでもありそうな誰にでも思い当たるような、普遍的なテーマであるにもかかわらず
そこには山田太一さんの、いつも暖かくも強いメッセージを受け取る。
ドラマの中での、気に入った名言たちをご紹介。
①『男たちの旅路』
(1989年放映・鶴田浩二主演)
シリーズ4部3回「車輪の一歩」では
当時バリアフリーのまだ認識の浅い、車椅子社会に一石を投じた傑作。
車椅子の青年にガードマン役の鶴田浩二が
「ギリギリの迷惑は君たちはかけてもいいんじゃないか」というセリフ。
差別や偏見、そして「誰かに迷惑をかけてしまうんじゃないか」と人目を気にする日常。
生きているだけで迷惑はかかるもの。
自分とて、知らず知らずのうちに誰かに迷惑をかけながら生きている。
迷惑なんて思うんじゃない。そんなの、お互い様だ。
②『ふぞろいの林檎たち』
(1983年放映・中井貴一主演)
落ちこぼれ大学生の青春群像劇。
最終回
就活中、企業の説明会のシーンで西寺(柳沢慎吾)が
企業側のミスで一流大学の優遇に腹を立てるも
一緒に居た、岩田(時任三郎)が
「いいから胸を張ってろ」・・・「結局は生き方よ」と西寺に諭すシーン。
かっこいいぜ。もうこれ以上の解説はないだろう。
過去はどうやっても変えられない。
けれども、
考え方・生き方、はいくらでも変えられる。
③『思い出づくり。』
(1981年放映・古手川祐子主演)
時代が時代、結婚適齢期?!の24歳。
うら若き3人の悩む恋愛事情を描いた作品。
第6回
池谷香織(田中裕子)に振られたお見合い相手・岡崎勇(矢島健一)の再会のシーン。
振られた岡崎が香織に言ったセリフ。
平凡で面白みのない人間と自分のことを言って「諦めます」と伝える。
「ただ、これは雑談ですけど、
ケルケゴールがこんなこと言っています。」
「この頃はみんな面白い人間を求めている。どんなふうに面白いか?どんな面白いことをしたか?そう言うことが人間を判断する基準になっている。
しかし、人間の静かで平凡な強さなどと言うものはあまり評価されない。面白くないから。
それから、こういうことはしておきたい、こう言うことは死んでもしてはいけない、というような一貫した決意を持った人間もあまり評価されない。その場その場で賑やかに面白いことをしたり、面白い発言をしたりする人間が評価される。それは情けないことだ、って言っています」
「それだけです」
華やかで煌びやかなものよりも、陽の当たらない場所を常に照らす。
社会的弱者、世の中からつまらないとされているもの、コンプレックスを抱える心。
常に暖かい目で、時に怒りをも感じる、唯一無二の力強いメッセージ。
いまの時代、わたしたち、に必要なことかも知れない。
大好きな山田太一さん。
ご冥福をお祈りします。