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2025.08.15一袋の胡瓜から【令和版 物々交換】人情物語

 

 

同じマンションの友人から、よく野菜をいただく。

 

 

彼女は、こちらが在宅時であっても

ドアノブに野菜をビニールの取っ手をひっかけて

LINEで「野菜(ドアに)かけといたよ!」と時間差での連絡をいただく。

 

 

 

 

 

1 令和版 物々交換

 

連絡をもらって初めて、きゅうりの存在に気がつき、

ドアノブにかかったビニールに入ったきゅうりを、キッチンに移動する。

 

 

 

ピンポンして、在宅であれば会って話せばいいのかもしれないが

顔を合わすことはほとんどない。

 

彼女も子供が4人いる。

状況も状況だ。彼女自身忙しいのもあるが、

察してくれているのだろう、と勝手に思っている。

 

はたから見たら水臭いようだが、

 

私は私で、人さまからいただいた野菜などをお裾分けするため

彼女の家のドアノブにかけて、同じように時間差で連絡をする(たまにうっかり忘れてしまって彼女から連絡がくる「もしかして?」と)

 

こんな時代だが、令和版「物々交換」している。

 

 

 

 

2 お礼から近況報告まで

 

いただいた野菜を食べた後は、味のお礼をする。

忘れっぽい私だが、これだけは忘れたくない。

 

「水々しくて美味しかった!ごちそうさま」

 

何度かのLINEラリーで、

彼女がご主人と登山を昨年から初めたこともわかり、

仲睦まじい笑顔のピースサインの登頂したツーショット写真も

思いがけず、ご馳走になった。

 

子どもも少し手が離れ、年に4、5回登る山はどんな景色なんだろうか。

未だバタバタだろうが、夫婦二人の時間をエンジョイしておるな。

 

 

 

「道の駅で買いすぎた」という、ずっしりと重く太ったきゅうり。

包丁を入れた瞬間にしっとりと刃にくっつく感じといい、断面の水々しさから確信する。

これはうまいヤツ、だと。

 

ちょうどその日の夕飯で、買っていたきゅうりを使い切ったところだった。

なんというタイミングなのだろう。

我が家の冷蔵庫事情まで把握しているとも思えないが、

 

以前彼女と

「どんだけあっても困らないのが野菜、だよね!」

ガハハと笑って話したことがある。

 

副菜にも、カサ増しにも、れっきとした一品にも、なる。

レパートリーをいかに単調にしないために。

 

きゅうりだったら、サラダに、浅漬けに、ごま油で炒めても、

今の時期だったらさっぱりと酸味が欲しい、梅きゅうが気分だ。

 

いただいた野菜を家族で美味しく食す。

野菜は我が家の料理をサポートしてくれる。

 

 

 

 

3 おねだり作戦

 

実はもう一人、野菜をいただく人物がいる。

マンション管理人のおじさん、だ。

 

ある夕刻の帰宅時

「あ、金内さん、ちょっと」

と管理人室の窓から、管理人のおじさんから声をかけられた。

 

その後、ごそごそと奥の方から、

じゃがいもや茄子やピーマンなどの野菜が入った、ずっしりと重いビニール袋を

窓口から私にぎゅっと押し付けた。

 

「家庭菜園で作っている野菜が余ってさ。二人暮らしで食べきれないんだ。持っていってくれる?」

 

「えっ?? いいんですか?!助かります!」と、

すこし戸惑ったような表情とは裏腹に、手はすでにビニールを握りしめている。

 

ああ、ありがたい。本当にありがたい。

 

 

 

流石に貰いっぱなしではいけない、と思い、

後日、近くの自販機で買った、冷えた缶コーヒーとスポーツドリンクを渡した。

 

「もうこんなことはやめてくださいね」

と管理人のおじさんは謙遜していたが、そうもいくまい。

 

 

「いやいや〜。それにしてもスーパーで買うのと全然味が違いますよ。

子供達もよく食べて。これ美味しいね、と話したんですよ。

それで、美味しかったから。。

図々しいけれど、また、、いただきたいなって思って」

 

 

管理人のおじさんの顔が緩んだ。