
Netflix配信
ドラマ
『阿修羅のごとく』
第3話レビュー
前回は新聞。
今回は電話。がキーポイント。
時代は変われど、人の行いは変わらず。
次女巻子(尾野真千子)の夫・鷹男(本木雅弘)が浮気相手と間違えて
自宅に電話をしてしまい、受話器をとった巻子。
浮気が確実になる。
妻が「自分が愛人だと思い込んでいる」夫に対し呆れて笑っているシーンが何ともリアル。
それに加えて
四女・咲子(広瀬すず)が同棲相手の浮気現場を見た時のシーンもまた、すごい。
浮気相手が部屋に居ながら、まるで「存在」が無かったかのように、断食をしていたボクサーの同棲相手陣内(藤原季節)に大好物のラーメンを食べた事「だけ」叱責する。
(一見何不自由なく見える)家庭をもつ、巻子。
(同棲はしているが)家庭をもっていない、咲子。
浮気発覚後の、
それぞれの女の表情や態度が違えど、
怒りの中に、どこか「白けた部分」冷静さがあるのが興味深い。
脚本・向田邦子氏のリアルな観察眼、だろう。
4人姉妹のそれぞれの恋模様を描いている。
表面上は幸せそうな「お面」を被っているが、
その実はゴタゴタが絶えない。
華やかな他の姉妹とは毛色が違う、三女・滝子(蒼井優)。
真面目で少し神経質。
相手の男性・勝又(松田龍平)も、また存在感がなく
長女、次女から「なにまたさん?だっけ」と
いつまでも名前を覚えてもらえない。
そんな勝又、三女にアプローチするため
調査した書類を公園で燃やし、ボヤ騒ぎまで起こしてしまう。
不器用で思わず応援したくなる。
(なんか大好きだなぁ)
いずれにしても、それぞれの男たちのダメさが
今回の見どころ。
長女の不倫相手(内野聖陽)の妻(夏川結衣)との鉢合わせで、長女を差し置いて自分だけ保身したり。
次女は愛人の存在を知りながら「知らぬふり」を決め込み。
三女は不器用な恋人にイライラし。
四女はうだつの上がらないボクサーをいつまでも信じ。
また、父も愛人(戸田菜穂)から別れを告げられ落ち込み。
母も一見穏やかそうだが、父の浮気相手の家まで気になり、来てしまう。
巻子の自宅。
傷心の咲子と巻子二人を前に、鷹男が口を開く。
・・・・・
「気持ちわかるんだなぁ。
いやぁ、その(ボクシングの真似)これのさぁ。
こんな事言うと、咲ちゃん怒るかもしれないけど、
咲ちゃんみたいに、気ぃ遣われたら
男としてはかえってつらいよ。
小説家が知り合いにいないから、想像で言うんだけど
小説書くだろ。
それをそっと女房が読んで間違い直されたら、
どんな気する?
亭主が脂汗流して苦しんでは
ハナボコチョウチョウチンで寝てる。
そりゃそう言う女房の事、
亭主が「バカのどうの」悪く言うよ。
でもさ、言いながらホッとしてんだな」
巻子「だからって。ラーメン食べて浮気して良いって事?」
鷹男「そりゃ悪いよ。でもさ男の理屈って言うのは理屈じゃない。そう言うもんだ、って話」
明らかに咲子よりも
ぼんやりした顔立ちの口調の遅い、浮気相手に
勝った負けた、と挑む女たちに対し、
多少抜けていても(いや抜けているからこそ)、拠り所が欲しい男たち。
夫のスマホを見ては浮気がバレる。
よくある話。
時代背景とは違っても、
やはり、人の心情、行動は同じ。だろう。
それにしても、すごい役者揃い。