苦手なタイプ、の顔である。
ギラギラした、アクの強い、強引なイメージ。
知り合いの大嫌いなオヤジ、にも似ている。
だから読まなかった。
しかし、先日魔が差したかのように食指が動いた。
そして読んでみたら驚いた。
面白い。。
あの顔(失礼!)から、こんな小説ができるなんて、、と戸惑った。
📕📕📕
『幸福な生活』
百田 尚樹(ひゃくた なおき)著
祥伝社文庫
📕📕📕
19のショートショートからなる
一見幸せそうな家庭の『ある一面』が結末を迎える、
世にもおぞましいストーリーたちである。
この話の中の家族も
例外なく外からは、また家族であってもわからない一面というものが存在する。
人は見かけによらないねえ。
さきほどの
百田氏の私の勝手なイメージと小説の内容と通じる。
なんてこった。
こんなに面白いショートショートは初めてだ。
本を読んでいる最中、集中力が切れて
少し退屈になってスマホをいじってしまう時、だってある。
が、しかし、この本に至っては一切ない。
スクロールする指は、ページをめくる指になり。
驚いたり、唸ったり、ゾクゾクしたり。
一番面白いところで到着駅が近づくと「ああーーもう」心の中で舌打ちをした。
そのくらい面白い。
登場人物の発する最後の一言が、次のページの一番最初にあり、
文章構成の華麗なオチにこの本の凄さがある。
最後まで何が起こるかわからない。
あっちに行きこっちに行き
まんまと振り回されるのだが、そこがなぜが心地良くもある。
百田氏は人の心を操る天才だと思う。
まさに読むエンターテイメントだ。
最後のクドカンこと宮藤官九郎の『解説』も最高にいい。
過去に『探偵!ナイトスクープ』の構成作家だった百田氏と
クドカン氏が初対面のエピソードは笑える。
p331・・・・・・
宮藤です。
周りがあんまり騒ぐから逆に手が伸びない、そんな作家さんがいます。
面白い、泣ける、一気に読める。そう言われるとなんか、センスを試されているような気がする。面白くなかったらどうしよう。泣けなかったらどうしよう。途中で飽きたらどうしよう。仮に面白かったとしても、それを未読の他人に薦める喜びや優越感はもはや無い。みんな知っている。僕がベストセラーを手に取らないのは、そんな料簡の狭さが原因です。
百田尚樹さんも、まさにそう。
ご本人を知らなかったら、たぶん読んでなかったと思う。
(中略)
誰が書いたか分からない。そういう場で経験を積んだ作家は強い。個性で勝負できないぶん、単純におもしろいもの、娯楽性の高い作品を書くしかない。読者を(視聴者を)楽しませることを第一に考えたら、文体なんか気にしてられない。個性はむしろ邪魔になる。だから作風を持たない。百田さんのように長いのも短いのも、戦記もの、青春もの、主婦目線、政治家目線、女子高生目線、どんなジャンルでも、どんなスタイルでも書けるんだと思います。
‥‥‥とまあ、ひとしきり持ち上げましたが、僕はまだ百田さんの本を3冊しか読んでないわけで、白状すると、やはり才能に嫉妬しているんだと思います。
・・・・本書『解説』より抜粋・・・・
クドカンもまた別の意味での天才だ。
百田氏の本に感化され、すでに当方2冊目に突入している。
スマホより、テレビより、刺激的なものを求めたい人、ぜひ必読を。