不可抗力にあなたはどう向き合う?
病気、身近な人の死、天変地異。
などなど。
ありとあらゆる
「自分の思い通りにならないこと」
「思ってもみない、よからぬ出来事」
「どんなに努力しても変えられない事実」
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くもをさがす
西加奈子 著
河出書房新社
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著者の西加奈子さんがコロナ禍に乳がんを患った。
しかも異国の地、カナダで。
ご本人のがんの様子を綴った、長編の作品。
がんというと「闘病」という言葉がまず頭に思い描く。
が
本文では
闘病、病気やっつける、という表現を使っていない。
病気を受け入れる、ことでこの作品の良さがあらわれている。
著者である西さんは当初日記として世の中に出すことを考えず、執筆していたそう。
それだけに時にセンセーショナルな表現もあるが、
それがかえって紛れも無い事実として記されていることに没入する。
カナダである。バンクーバーである。
もちろん行ったことはないが
本書での
医療体制が日本とは大きく違うことに驚かされる。
病院で何時間も待っても、それでも医療を受けられることのありがたさ。
カナダでの病院の受付のキレ気味の対応のくだりなどは
がん患者に対しての、また人間に対してのリスペクトもない。
後に同じカナダで対応のいい受付やスタッフにも恵まれるが、
それにしてもお国柄、である。
日本に一時帰国した時の様子も印象深い。
道が狭くて子どもを連れて歩くにも電車に乗るにも肩身が狭い思いをしたことや
過剰なサービス、人に見られることにくたびれている日本人のファッション。
向こうから見たこちらの風景。
日本のそれを「情」と呼ぶあたりに、西さんのセンスを感じる。
これも西さんのセンス、というだろう。
もちろんカナダ人の看護師が関西弁で喋っているわけではない。
本文全てまともに英語を日本語に直訳していたら
きっと「沈む」だろう。
だがそこをカラッと明るくしてくれるのが
現地カナダ人看護師たちの“変換された”言葉。
p98・・・・・
「今私は漢方に助けられている。だから止めたくないんです。」
すると、サラは笑った。
「そうなんや、オッケー!」
お願いしておいて、あまりにあっさり承諾してくれたことに、驚いた。
え、本当にいいの?
と言うと、サラは言った。
「もちろん。決めるのはカナコやで。」
サラは、私の目をまっすぐに見つめていた。
「あなたの体のボスは、あなたやねんから。」
(本文より抜粋)・・・・・・
ほれ、み。
気持ちが前向きになるカナダ人の関西弁、である。
淡々と記述されているが、それにしても
手術で両方の乳房・乳首を切除したくだり、
他にも体が動けなくなる様子、子供の熱性痙攣看病などでの話は胸が傷む。
病気が怖い、自分が弱い。
自分の内面も包み隠さず曝け出している。
最後の一文に西さんの覚悟を感じた。
p245・・・・・
あなたに、これを読んでほしいと思った。
文章を書くことは、そしてそれを発表することは、大海に小石をなげるようなことだと、尊敬する作家が言っていた。ささいな音だ、小さな波紋だ、でも、自分の持っている全てを投げるのだと。
(本文より抜粋)・・・・・・・
自分なんて、と思っていないだろうか?
自分の行動など大したことない、と思っていないだろうか?
やる前から諦めていないだろうか?
自分を信じる。
それでも前を向く。
やれることは全てやる。
そんな気持ちになれる一冊だ。