「恋は、遠い日の花火ではない」
30年前にもなるがウイスキーのCMで
今でも心に残る、名作。
市川準監督の作品を思い出した。
下町の商店街、人混みの中、世代の違う男女。
たった1分間、30秒の物語に、訳もなくときめいたもの。
市川準監督が好き過ぎて、子供の名前にも「準」をつけたくらい
夫婦揃って大ファン。
(初デートに観たのが市川準監督『東京夜曲』)
話がずれまくってしまったが、
小野寺 史宜 著
祥伝社
この市川準監督の作品と通じるものがある。
どこにでも(ありそうな)日常。誰にでも思い当たるような心の機微をうつした、主人公。
変化のないストーリー。
そこが絶対的に、いい。
日常の世界こそ、最高のドラマだと思う。
バイオレンス、恐怖、浮き沈み。
そんなものはいらない。
・・・P279・・・
次いで、高瀬涼は思いもよらない事を言う。
「おれはたまたまちょっといい大学に行っているけれど、そんな事は何でもないと思っているよ。
だから青葉とも普通に付き合えるし、コロッケなんかも好きだよ」
高瀬涼からLINEがきたとき以上に驚いた。素直に感心した。ちょっといい大学。何でもない。普通に付き合う。コロッケなんかも好き。
高瀬涼は今の発言に引っかかりを覚えてあkいる人がいることに気がつかないのだ。気付けていない。と言ってもいいだろう。生まれつき高いところにいて、そこから下りたことがないから。
「でもおれが柏木くんだったら、青葉を幸せにできないとおもっちゃうんだろうね」
・・・(本文から抜粋)・・・
主人公、柏木聖輔にマウントをとるライバルの高瀬涼の言葉。
「いい」とも思い込みながら、不安を隠せない、一コマ。
誰しも同じ「ひと」なのだと思い直す。
下町、惣菜屋、コロッケ。
30年前にタイムスリップして
あの時キュンとした原風景とリンクする。
じんわり、心に火を灯す。
優しい気持ちになる本。